「天下無双」の男の背中

なんてことない出来事ですが
仕事で街中を走っていると、
いろいろな物が目に飛び込んできます。

これは、そんなある夏の
おだやかな日の話です。

車を走らせていたとき、
何気に歩道に目をやると

背丈は普通位で、
ぽっちゃり体型の男性が
やや猫背で、足取りもやや重め
といった感じで歩いていました。

服装は、Tシャツにジーンズ
といった、至って普通のいでたちで
年齢は30~40代といった
ところでしょうか。

猫背でぽっちゃりですので、
後方からみるとその背中かは、
「まんまる」に見えます。

しかしそんな、普通の風景に
強いインパクトを与えているのが
Tシャツに書かれている
文字だったのです。

そのまるい背中には、
力強い字体で「天下無双」と
書かれている。

なんとなく字のイメージからすると
もっと、ガッチリとした体型の人が
それを着るとしっくりくる感じも
するのですが・・・。

自分で選んで買ったのか?
もしくは、プレゼントされたのか?

残念ですが、
それを知るすべはありません。

しかし、自分で買うにせよ
プレゼントされたにせよ
彼の体型にはイメージが
どうしても合わないのです。

もしかすると
もともとそのギャップを
狙っているのかもしれない

そう考えると、私はその狙い通り
完全に気持ちを持って行かれている
という事になる。

ところで、この「天下無双」という言葉
どういった意味なのだろうか?
そう思い、調べてみると、

天下に並ぶ者がいないほど、
すぐれているさま。また、その人。
「無双」は世に並ぶものがないさま

という意味らしい。

勝手なイメージで
「戦国乱世の豪傑武将
みたいなものを
思い浮かべていましたが

実際に意味を調べてみれば、
「別に筋骨隆々でなくとも大丈夫」
という事がわかった。

何故なら、○○にすぐれているさまと
指定されているわけではないので、
例えばドラえもんの「のび太」のように
あやとりが得意だった場合、

「のび太のあやとりは天下無双だよね」
という使い方が出来るからです。

そうなると、話は戻りますが
これは一概にギャップを狙っての
「天下無双」である。という事は
言えなくなってきました。

今の時代は「ゲーマー」という職業も
あるくらいですから

もしかしたら、
とんでもないプレイ技術を持っていて
その世界では知らぬ者がいないほどの、
超有名人かもしれない。

もしくは、他に類を見ないほどの
超天才プログラマーという
可能性だってある。

仮に、もしも、
天才プログラマーだったとしたら
おそらく彼はこんな感じではないか。

↓ココからは妄想です

しかし受けた仕事は、
そこにどんな困難があったとしても
99%の確率で解決してしまうという
伝説の人物。

しかし、今回の依頼は、
そんな彼にとっても
カンタンな仕事ではなかった。

海外からの
サイバーテロにより仕掛けられた
日本の金融システムを根底から破壊する
最強のウィルスとの戦いだ。

もし、ウィルスを撃退できなかった場合
日本の銀行・証券会社の
データや資産が全て消滅するという、
歴史的な大障害となる。

それによる経済的損失は計り知れない。
なんとかそれだけは阻止しなければ
いけません。

しかし、残された時間はごくわずか。
明日、金融市場が開始する午前9:00までに
復旧しなくてはならない。

できるかどうかではない
やるしかない!

背水の陣の状況の中
彼はキーボードの前に座り
モニター画面に映し出される
プログラムと対峙した。

次の瞬間、
彼の頭脳は高速回転を始める。

トップアスリートが
凄まじい集中状態に入り
圧倒的なパフォーマンスをする事がある。

この状態を「ゾーン」というが
彼の今の状態が、まさにそれである。

作業は続き、そのまま夜が明けた。

そして、
市場が開始する4分前、
最強のウィルスとの戦いに、

彼は勝利した。

大歓声が上がる中、
てこずらせやがって
彼はそう一言つぶやき、そして
情報システム室を後にした。

↑妄想終了しました。


で、その帰り道に缶コーヒーでも
飲もうかと思っている時の、
うしろ姿」だったのかもしれない

そのように考えると
あの、まるい背中の「天下無双」も
しっくりきます。

そうだ!

あれは、ウケを狙った
天下無双」ではないのです。

天下に並ぶもののない、
天才プログラマー
」の
天下無双」に違いないのだ!

日本を守ってくれて
ありがとうございました。

その神々(こうごう)しい背中は
今もくっきりと私の目に焼き付いている。

それでは、また!