ウチのお店は、日によって商品の注文数が違うので、作業量が「多い日」と「少ない日」があります。
なのに、終了時間はだいたい、いつも同じ時間になります。
シフトの関係で、一人余裕が出てしまった日があったとしても、終了時間は不思議と同じ時間になってしまう。
「早めに終わったら、これやってもらおうかな」なんて考えていたのに・・・。
「この現象、うちの店だけ?」って思い、調べてみたのですが、
そしたら、なんか「リンゲルマン効果」なるものがあるらしい、という事がわかりました。
内容を簡単に言ってしまうと、「人は集団で作業を行うと、手を抜く」ということです。
「え?」
「・・・」
「ちょ、」
「ちょ待てよ!」
「昔、金八先生も言っていたじゃないですか」
「人という字は、人と人が支え合って人と書く!」って。
※武田鉄矢さんが「この説明は、実は正しくありません」とテレビで言っていました。
「そして、こんな話も聞いたことがありますよ」
「1人よりも2人」
「2人よりも3人で」
「お互いが助け合うことで、相乗効果が発揮され」
「(1+1)が(3)にも(4)にもなるんです!」って。
「あれは何だったんですか!」
という事で、
その「リンゲルマン効果」なるものを詳しく見ていこうと思います。
リンゲルマン効果って何?
先ほど言いましたが、リンゲルマン効果とは「何人かで作業を行うと、一人当たりの能力が、人数増加に比例して低下していく現象」で、「社会的手抜き」「フリーライダー(ただ乗り)現象」「社会的怠惰」などとも呼ばれています。
20世紀初頭にリンゲルマンというフランスの農学者が、「綱引き」「荷車を引く」「石臼を回す」などの、集団作業時の一人あたりのパフォーマンスを数値化する実験を行い、この現象を明らかなものにしました。
実験は、次のように「1人あたりの力量が、人数が増えるのに比例して低下する」という結果になりました。
【実験の結果】
1人の時の力量 | 100% |
2人の時の力量 | 93% |
3人の時の力量 | 85% |
4人の時の力量 | 77% |
5人の時の力量 | 70% |
6人の時の力量 | 63% |
7人の時の力量 | 56% |
8人の時の力量 | 49% |
「8人になると49%・・・、半分ってすごいですね。」
「そんなに手を抜いちゃうの・・・。」
何で発生するの?
リンゲルマン効果は何で発生するのでしょうか?
社会的手抜きが発生する要因には、次のような環境や心理的な要因から発生すると考えられています。
- 集団の中で、自分だけが評価される可能性が低い環境。
- 自分が頑張らなくても、優秀な周りの人が支えてくれる環境。
- みんなダラダラしている中で、自分だけ頑張るのは損になる事から、ダラダラに同調してしまう環境。
- 他人の存在自体に気が散ってしまう。
このような環境の下、意識的に手を抜く場合もありますが、本人は頑張っているつもりでも無意識のうちに手抜きになっているといった現象が発生するのです。
どうすればいいの?
社会的手抜きの発生を防ぐには、要因となる「環境の見直し」や、「仕組みの構築」が必要となります。
そこで、次のような対策が有効となります。
- 集団を少人数のグループに分ける
- 個々の役割を数値化する
- 評価・報酬を見える化する
- 見て貰えているといった安心感を与える
概ね、「個人に対して物理的・心理的な面で報酬を提供できる環境・仕組み」という事でしょうか。
実験を再現してみた
ここで実験の話に戻りますが、2015年にNHK Eテレの「大心理学実験」という番組で、「リンゲルマン効果」について、再現実験が行われました。
実験では、何の調査なのかは伝えずに、マッチョな男性5人(マッチョチーム)に「トラックを引っ張るチャレンジ」をして貰います。
すると結果はやはり、人数が増えるに従い引っ張るパワーは低下していきました。
次に、大学のサッカー部員5人(サッカーチーム)で、再度同様の実験を行いましたが、
やはり同じ結果が出ました。
この事から番組では、「集団で暮らすのに最適なように進化した私たちは、人に頼ったり、責任が分散したりすることで、集団だと手を抜くことを覚えた。」と結論付けています。
20世紀初頭に行われた実験を、現代風にアレンジして行っても同様の結果が出るというのは、なんか感激ですね。
しかし、人間は「罰」や「報酬」なしで、この「手抜きの法則」に人は抗う事ができないのでしょうか?
そんな疑問に応えるべく、この実験には続きがあります。
今度は、綱引きのエキスパート5人(プロチーム)に来てもらい同様の実験を行いました。
すると、結果は・・・。
なんと、
人数が増えていっても、パワーの低下はありませんでした!
「なんか、すごく希望が湧いてきましたね!」
さぼれる状況であっても、プロは手抜きをしないという事が分かりました。
更に実験は続きます。
プロが手抜きしないのは分かったけど、それでは、「エキスパートではない、並の人はどうすればいいのか?」
そこで、今度はチアリーダーに登場してもらい
マッチョチームの男性5人全員に対して「がんばれ~♪」と、応援してもらったところ
結果はガラッと変わり、プロチームの結果と同様に、人数が増えていっても、パワーの低下はありませんでした。
「やれば出来るやーん!」
そして、次は、サッカーチームの男性の1人の名前だけ呼びながら
「○○さん、がんばれ~♪」「○○さ~ん♪」と応援してもらったところ、
○○さんのみ、パワーの低下は無く、他のメンバーは更にパワーの低下がみられた。
という結果となった。
まとめ
なんか男性のバカさ加減が証明されてしまった感も否めませんが・・・、
要するに「誰かに応援してもらう事で、さぼれる状況であっても全力を出し切ることが出来る」という事が言えるのだと思います。
この事から、普通の人は、少なくとも
- プロ意識を持つ努力をする
- 応援してもらって、やる気を上げる
の2つの方法が有効だという事がわかります。
でも、「誰かにやる気を上げてもらう」という方法ですと、常に誰か応援してくれる人がいないと、無意識のうちに手を抜いてしまう事になります。
であれば、やはりプロ意識を持って、チアガール的な人がいなくても、当たり前のようにしっかりとできる方がかっこいいですよね。
自分を「集団の中の1人」と考えた場合、「仕組みや環境を変える」となると、出来る事が限られてきてしまいますが、
「プロ意識を持つ」ということならば、1人でもできます。
先ずは、「無意識のうちに手抜きが起きているんだ」という事実を意識し、
それならば、集団の時でこそ、しっかりと能力が発揮できるように、
「プロ意識」
育てていきたいと思います。
それでは、また!