以前、Nさんという
男性の利用者さんがいて
かなりの認知症を
持っていました。
奥さんはすでに
自宅での暮らしが
できなくなり
施設に入所しているのですが
Nさんはその事をあまり
理解していなくて、
奥さんを探しに
さ迷い歩いてしまうことが
度々あった。
そんなこともあり、
お弁当を持って行って、
不在だった時もよくあったので、
その場合は
部屋にお弁当を置いておき、
ケアマネに連絡するとともに、
数時間おきに
Nさんの携帯電話に
連絡をし続ける
といった対応を取っていました。
しかし、あるとき、
不在だったので、
いつもの流れで連絡を
しようとすると
携帯電話の電源が
入っていない。
こうなると、
電話で追っかけることが
できなくなるので、
てんやわんやとなる。
その時はなんとか
ケアマネさんが
夕方に様子を
見に行ってくれて、
自宅に無事に
戻ってこられたのを
確認することが
できた。
だが、
数日たったら
また電源が切られている。
何かの拍子で電源ボタンを
長押ししてしまって
切ってしまうのかも
しれない。
おそらくNさん自身では
電源を入れなおすことは
できないだろうから、
次の配達時に
私が電源を入れなおして
こよう!
という事になった。
そして、
Nさんの部屋に入り
携帯電話を探すのですが、
一向に見当たらない・・・。
Nさんも一緒に
探してくれるのですが
見つからない。
15分ほど
部屋を探したのですが
見つけることができず、
次の配達もあったため、
いったん諦めて再度、
出直して探しに来ようと
考えた。
そして、Nさんに
「見つからないから
また探しに来るね、
配達に行かないと
いけないから行くね」
と伝えて、玄関に向かった。
と、その時、
あった~!
奥のリビングから
Nさんの大きな声が
聞こえて来た。
え? ホントに!
クツを履き終わっていたが、
私は急いでリビングに
戻っていった。
するとNさんが
すごくうれしそうな表情で
私を見ながら
ほら・・・。
と言って差し出してくれた。
その表情には、
探し求めていたものを
やっと見つけることができた
嬉しさと、
「オマエ、どこにいたんだい?
淋しかったろう?」
とでも語り掛けているような、
そんな愛情のようなモノも
伝わってくる眼差しだった。
でも、
Nさんが手に持っているのは
エアコンの
リモコンだった。
。。。_| ̄|○
「これかなぁ?」
みたいな疑いは1ミリもなく
確信しきってる様子で
こちらを見ている。
無いと思って諦めたと
思ったら、
見つかった喜びで
感情が高まったと思った、
からのオチで
一瞬私はフリーズしかけた。
「あ、あ~
これは、エアコンかなぁ~。
Nさん、またあとで来るね!
じゃ・・・。」
なんか、Nさんに対しての
自分の冴えない声掛けに
もっと気の利いたセリフは
無かったのだろうか?
そんな事を思いながら
私はNさん宅を後にした。
それでは、さよ~なら!